LOVE CALL 〜番外編〜


 あれから海堂と全く会っていない。

 「仕方がないか、俺が悪いんだ」

 高校に入って、新しいクラスに馴染んできた頃。


 あの時の海堂、泣いてたな。

 心が痛んだ。

 でも泣いてくれた海堂を愛おしく思っても、俺には抱きしめることができなかった。

 俺は海堂のこれからのためを思って、自分から手を引いた。

 たった一年とはいえ、彼を待たせることが俺にはできなかった。

 

 もし、その一年の間に海堂が心変わりをしたら?

  

 そう思っただけで俺は彼に何をするか分からなかった。

 そんな自分が恐ろしかった。

 そんな醜い自分を見られたくなかった。

 来る日も来る日も海堂のいない毎日。

 ある日、海堂が欲しくて気が狂いそうになった時、同じクラスになった不二に相談してみた。

 

 「君は海堂のことを信用してないの?」

 

 いつものにこやかな笑顔で答える。

 その台詞にぞっとした。

 (俺が海堂を信用してない!?)

 そんな筈ない。

 しかし、もしかしたら自分は海堂の事ばかり考えているつもりだったが、実は嫌われないように必死な自分のことしか考えていなかったのかもしれないと思った。

 自分が間違ってたのか?


 (今更気が付いたって遅いだろ・・・)

 俺は自分を笑い飛ばした。

 その日の夜、俺はなかなか寝付けなかった。

 

 やっぱり海堂と別れたのは間違いだったのか。

 


 今更になって後悔が津波のように押し寄せてきた。

 また、あの頃のような日々を送りたい。

 海堂!!!


 そう思ってからの俺の行動は早かった。

 自分勝手だと思われるかもしれない。

 今更何だと罵られるかもしれない。

 それでも俺の手は真っ直ぐ携帯に伸びていた。

 時計は既に一時を回っていた。

 海堂・・・

 海堂!!

 自分でも「都合いい」と思うけど、今は一刻でも早く海堂の声が聞きたい。

 どんな罵声でもいい、今でも愛するその人の声が。

 まるで、砂漠で遭難した人が水を求めるかのように。

 “海堂薫”という名の生命の水を求めるかのように。


 そして、俺はコールボタンを押した。



                              

                         番外編 完

 

          

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